腰痛や関節の痛みが長引くとき、病院でレントゲンやMRIの検査を受けると「骨の間が狭い」「ヘルニアがある」と説明されがちです。しかし、画像に異常(画像所見)があるからといって、それが今の痛みの直接原因とは限らないという事実があります。
医療の現場では、病態の危険性や長引く理由を特定するために「治療のフラッグ(識別サイン)」という基準を用います。
画像検査が最も威力を発揮するのは、命に関わる病気や即座に専門医の治療が必要な危険信号、つまり「レッドフラッグ(赤信号)」を見つけ出すときです。具体的には、骨折、悪性腫瘍、感染症などが該当します。病院の検査で「緊急の手術は必要ない」と言われたなら、まずはこの重大なリスクが除外されたということです。
レッドフラッグが除外された後、画像所見として写る変形が本当に痛みの犯人なのかを慎重に考える必要があります。ここで、医療先進国であるアメリカやカナダの研究データが大きなヒントになります。
北米の研究では、健康で全く腰痛がない人のMRIを撮影したところ、なんと多くの人に椎間板の変形やヘルニアが見つかりました。つまり、明らかな画像所見があっても、痛みのない生活を送っている人は無数に存在します。画像に写る変形は、白髪や肌のシワと同じような年齢的変化に過ぎないケースが多いため、カナダのガイドラインでも初期の画像検査は推奨されていません。
むしろ、画像所見に捉われて「ヘルニアがあるから治らない」と思い込むこと自体が、脳に恐怖を植え付け、回復を遅らせる最大の原因(イエローフラッグ:心理的阻害因子)になってしまいます。
さらに、痛みの長期化には職場の人間関係や仕事への満足度、復職への不安といった労働環境のストレス(ブルーフラッグ:環境的阻害因子)も深く関係していることが分かっています。画像所見への恐怖と、こうした環境のプレッシャーが重なることで、脳の痛みのセンサーが過敏になり、治りづらい状態を作ってしまうのです。
重大な病気が否定されたのであれば、次に目を向けるべきは過去の画像データではなく、今まさに動いているあなたの身体そのものです。
どの動きで痛みが変化するのか、神経の伝達や筋肉の連動性は正常に機能しているか。これらを客観的に評価し、身体のシステムを正常化させていくことで、たとえ画像所見に変形やヘルニアが残っていたとしても、痛みなく自由に動ける身体を取り戻すことは十分に可能です。



